酒類販売免許を解説-お酒を販売する資格の要件と申請

ラッピングされたシャンパン

お酒を販売する事業をはじめるには、酒類販売業免許が必要です。酒類販売業免許は、販売形態や品目に応じて取得する免許が区分されています。


  • 酒類販売業免許とは?
  • 新たに酒類販売業の事業に参入したい!
  • インターネットでお酒を販売したい!

今回は、酒類の小売販売免許を中心に、どのように取得するかを解説していきます。

1.酒類販売業とは

酒類を販売する法律として「酒税法」があります。この酒税法で、お酒の定義や販売免許が定められていますので、整理していきましょう。

(酒類の定義及び種類)

第二条 この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

2 酒類は、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類の四種類に分類する。

酒税法第二条

(酒類の販売業免許)

第九条 酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類製造者がその製造免許を受けた製造場においてする酒類(当該製造場について第七条第一項の規定により製造免許を受けた酒類と同一の品目の酒類及び第四十四条第一項の承認を受けた酒類に限る。)の販売業及び酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業については、この限りでない。

酒税法第九条

酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法に基づき、販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。

販売場ごとに受ける必要があるとは、例えば、本店で販売業免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに販売業免許を受ける必要があるということです。

|酒類を提供する飲食店との違い

酒販売店と飲食店ではお酒を提供する形態が異なります。酒販売店はお酒をボトルや缶のまま販売しており、飲食店はお酒をボトル等の容器からグラスに注ぎ提供しています。この提供形態の違いから、必要な免許が変わってきます。

形態内容必要な許認可
酒販売店未開栓のお酒をボトルごと販売(卸売、小売、通販)酒税法に基づき「酒類販売業免許」が必要(税務署)
(酒類提供)飲食店開栓したお酒を飲食用として提供食品衛生法に基づき「飲食店営業許可」が必要(保健所)

2.酒類販売業はどう変化してるのか

|お酒のグローバル化(輸出入、特需)

海外のお酒を輸入して販売したい。または、日本のお酒を海外へ輸出して販売したいといったケースが増えています。海外で見つけた日本未発売のワインを販売する等、ビジネスモデルの可能性が拡がります。

|インターネットによる販路拡大(輸入酒、地酒、クラフトビール)

お酒の飲み方の多様化や贈答用として、インターネット販売は一般化しつつあります。また、コロナの影響もあり、対面での販売からインターネット販売が活況をみせています。

|新たな販売方法の拡大(宅配サービス、スマホアプリ等)

上記、インターネット販売やスマホアプリの需要拡大から、宅配サービス等の販売方法が多様化しています。また、酒販店経営者の高齢化から、昔ながらの酒屋さんが減少し若手後継者が活躍している背景もあります。

|お酒の買取販売(リサイクルショップ等)が増加

たとえば、リサイクルショップ等が来店客の持ち込みや出張買取によりお酒を買取り、ヤフオクなどのインターネットオークションで販売するケースです。この場合は、古物商免許も必要となります。

酒(アルコール)の陳列し販売する

3.酒類販売業免許の種類

酒類販売業免許は、大きく分けて「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」に大きく区分され、さらに、販売する形態や品目により取得する免許が区分されています。

○酒類販売業免許

➢酒類小売業免許

  • 一般酒類小売業免許
  • 通信販売酒類小売業免許
  • 特殊酒類小売業免許

➢酒類卸売業免許

  • 全酒類卸売業免許
  • ビール卸売業免許
  • 洋酒卸売業免許  
  • 輸入卸売業免許                
  • 輸出卸売業免許  
  • 自己商標卸売業免許         
  • 特殊酒類卸売業免許

4.お酒の小売業に必要な主な免許

お酒を小売販売する主な免許として「一般酒類小売業免許」と「通信販売酒類小売業免許」があります。

|一般酒類小売業免許

販売場において、飲食店等の酒類を取り扱う接客業者や一般消費者に対し、すべての品目の酒類を小売できる免許です。

  • 全酒類の小売が可能
  • 有店舗、無店舗ともに可能
  • 1つの都道府県内で小売可能

|通信販売酒類小売業免許

2都道府県以上の地域の消費者等を対象として、インターネット、カタログ等により販売ができる免許です。

  • 輸入酒は販売制限なし
  • 国産酒は大手メーカーの酒類は取扱い不可(3,000kl制限。詳細後述)

一般酒類小売業免許は基本的に1つの都道府県のみの販売を対象としています。したがって、販売エリアが2都道府県やそれ以上におよぶ場合は通販免許の取得をした方が良いとされています。

5.酒類販売業免許をとるためには

酒類販売業免許をとるための要件には、大きく「人」、「場所」、「経営基礎」、「需給」に分かれます。どんな人がどの場所でどのような事業見込みで販売するのかが審査されます。

|人の要件

一般酒類小売業免許を受けるためには、申請者が各要件を満たしていることが必要です。申請する人の納税状況、賞罰の有無などが規定されています。

|場所の要件

どんな場所でお酒を売る(免許を取得するのか)のか審査されます。

具体的には、申請販売場が、

  1. 製造免許を受けている酒類の製造場や販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場又は料理店等と同一の場所でないこと
  2. 申請販売場における営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていることが必要となります。

|経営基礎要件

免許の申請者が経営の基礎が薄弱であると認められる場合は免許が取得できません。

具体的には、

  1. 現に国税若しくは地方税を滞納している場合
  2. 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
  3. 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っている場合(例)資本金100万円の会社で、100万円超の繰越損失が出ている場合
  4. 最終事業年度以前3事業年度の【全ての】事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合(例)資本金100万円の会社で、3期連続で20万円超の欠損金を生じている場合

※3・4はどちらか1つに該当するとNGです。

また、申請者が、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有するかが、審査されます。事業の経営経験の有無や酒類関連ビジネスの経験の有無等から総合判断されます。

なお、一般酒類小売業免許は、通信販売酒類小売業免許より経営基礎要件が厳しい内容となっています。

|需給の要件

酒類の需給の均衡を維持する必要があるため、どこから何を仕入れて、どこにどのように売るのかが審査されます。安定的な仕入ルートを確保し、具体的な事業計画が必要です。

6.酒類販売業免許の申請方法

|申請のながれ

事前相談 酒類指導官が常駐する税務署

申請書提出先 販売場を所轄する税務署に提出

審査期間 おおむね2か月前後

免許付与 審査の結果が書面通知

登録免許税の納付 免許1件につき3万円

酒類の販売開始

免許の有効期限は無く、更新制度はありません。一度取得すれば会社や事業が存続する限り有効です。

|申請書類

  • 酒類販売業免許の免許要件誓約書
  • 申請者の履歴書 ※通信販売酒類小売業免許は不要
  • 法人の登記事項証明書及び定款の写し
  • 複数申請等一覧表
  • 地方税の納税証明書
  • 土地、建物、施設又は設備等が賃貸借の場合は賃貸借契約書(写)
  • 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
  • 土地及び建物の登記事項証明書
  • その他参考となるべき書類

なお、酒類販売業免許申請書は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)により提出が可能です。e-Tax の利用に当たっては、事前に開始届出書を申告所得税や法人税の納税地を所轄する税務署に提出する必要があります。

7.まとめ

酒類販売業免許の解説として、酒類小売業免許を中心に解説してきました。新たに酒類販売事業への参入をお考えの方や、いまの業務での法令遵守の観点から、情報収集や許可取得に向けた取り組みが必要です。

また、2021年は、補助金の内容が非常に豊富です。新たな事業展開時は、補助金を使うチャンスですので上手に補助金を活用していきましょう。

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事業再構築時に必要となる許認可の解説はこちらから!

新たに許認可の取得をお考えの方へ、申請が分かりづらい場合には、申請を行政書士が代行サポートさせていただきますのでお気軽にお問い合わせください。



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